平成24年6月9日(土)
 
第13回となる今回の公開セミナーは
「市民は政治を変えられるか?〜ボランティア、NPO、市民、そして政治〜」というテーマで、関西学院大学法学部教授・法学部長 岡本 仁氏に講演をいただきました。


講演中の関西学院大学法学部教授・法学部長 岡本 仁氏

熱心に講演に耳を傾ける満席の会場風景
  

 講演要旨:
岡本先生は、東日本大震災の事例をもとに、データ等によりボランティア、NPO、市民は、助け合おう、そして社会を良くしようという強い気持ちを持って頑張っているが、その一方で政治は停滞していると解かれた。

二大政党制のもと日本政治史で初めて国政選挙で野党が圧倒的民意を得て政権交代を果たしたが、現実は期待外れの状態であり、国民の多くが失望している状況である。こうした政権への不満や社会の閉塞状況から、現状を画期的に変化させることへの国民の期待は、必然的に2つの選択肢へと繋がる。

一つは新自由主義(官僚、公務員たたき、小さな政府、利害調整を回避して、「やめる」という決定。強く単純な分かりやすいメッセージ)、
もう一つはナショナリズム(「国民」一体の利害を強調して敵を外部に作るのは、あらゆる内部対立を超える。地道な互恵的相互関係の構築努力の回避)である。

いずれも根気強く熟議するという民主主義の重要なプロセスが欠落する危惧がある。

一方、民主党政権は内部分裂、衆参ねじれ状態などにより政策が進まない状況であるが、本来、二大政党のもとでは、多数を取ったものにやらせてみることが必要であり、それを政権交代によって判定すべきものである。現状では、二大政党制の機能がうまく発揮できていないと解説された。

また、政治を伝える役割を持つマスコミも、政治業界の業界ネタ(赤坂政治、永田町言葉、「透けて見える」などの常套句的表現)で盛り上がるという体たらくな状態であり、権力を揶揄(やゆ)して溜飲を下げる姿勢はいただけない。権力を批判するだけではなく、実行できる権力を作ることも国民の義務であることを認識すべきと指摘された。

そうした現状分析のもと、岡本先生は現在の政治との向かい合い方に対する示唆として、
様々な制度の実験が進行中であると認識すべきものであると指摘された。

そのうえで、日本の憲法制度は決して完成した民主主義制度ではないし、世界のどこにも完成した民主主義制度はない。コミュニケーションの技術的発展や人々の主体的能力(識字率や教育の普及等)を含め、変化する現実にあわせて民主主義の形も変化する。
明治の時に、びっくりしながら、出来合いの便利な道具を輸入したのと同じで、日本の民主主義もまだまだ工夫しどころはたくさんあり、簡単な、「正解」はなく、同時に全ての人が賛成し、満足できる正解など存在しない。議論したうえで、実験するに値する政策を決め、きちんと実施すること、そして間違ったら変えることができること、これが重要であると解かれた。

最後に、市民の政治参加の新たな試みとして、自治憲章の制定や地域協議会などを開催する多治見市、名古屋市等の事例が紹介された。
講師プロフィール

1955年(昭和30年)名古屋生まれ。京都大学法学部、名古屋大学大学院修了、イエール大学等客員研究員を経て現職。
NPO学会理事。
著書『政治概念の歴史的展開―概念史から見た政治思想史T〜V』(晃洋書房、2004‐09)(共著)、
編著『ボランタリズム研究』創刊号(大阪ボランティア協会、2011)、「新たな市民社会は形成されたか―この10年とこれから」『季刊市政研究』(大阪市政調査会、168号、2010)等。 

あわただしい開場の準備風景



一般市民 セミナーの受付 同窓会員の受付

講演会場風景

高槻在住の国会議員も聴講


司会をする大西幹事

終了後の質疑応答

講演要旨 大西辰彦(S56年 法学部 卒)
写   真  広報グループ
               
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